折角連作でイラストを描いたので、簡単な解説付きでまとめを作ってみることにしました。
春「薄紅の墓標」
連作一枚目。実はこの時点では連作で描く事は想定していませんでした。「桜の木の下には死体が埋まっている」という有名なフレーズから思いついた情景で、夜桜と月を描きたくて描いたものです。現実にはあり得ない位に月を大きく描いてイラストならではの誇張を加えています。
衣装をセーラー服にするかゴスロリ風にするか迷ったのですが、和のイメージのある情景に敢えてゴシック系のドレスという組み合わせが面白く感じたのでこの形になりました。連作になった事でその方向性を踏襲していく事になり、結果的にこの絵が全体のイメージの起点になりました。
夏「黝闇の葬り火」
連作で描く事を決め、前作をふまえて死生観や輪廻といったテーマを軸に制作していく事にしました。タイトルは「色を表す言葉」+「情景のイメージ」という形で統一するようにしています。
この絵でいう「葬り火」は地のホオズキ、中空の蛍、空の星を総合したもので、地に葬られた死者の魂が空へと昇っていくというイメージを重ねています。先に季節のイメージで描きたいモチーフを決め、そこに後から意味を持たせていくような順番で情景を組んでいます。
綺麗な情景ですが自分のイラストとしてはちょっと毒が足りない気がしたので、背景に首の取れた地蔵を描いてみました。
秋「紅蓮の彼岸」
連作三枚目、折り返し地点です。自分は右利きなので左向きの顔の方が描きやすく、何も考えずに描くとだいたい左向きに描いてしまうのですが、連作を横に四枚並べる事を想定してみると前二作の人物が左向きの為ここから右向きにした方が収まりがいいと判断しました。
この絵のテーマは「此岸と彼岸の境」。昼と夜との境目の夕刻、生者と死者とを分かつ崖の淵に彼岸花が咲き誇るというイメージです。彼岸花は以前にも一度描いた事があるのですが、とにかく難しいモチーフで今回もあまり上手く描けたとは言えないですね。反省点も多いのですが、情景の描写としては割とうまくいった一枚でなかなか気に入っています。
冬「血華の葬列」
連作最後の一枚なので、この絵には「別れ」のニュアンスをもたせています。人物が右の画面外に向けて歩いていくという動きを意識し、左から順に並べて見た場合にも最後の作品である事を強調しています。
当初「白雪の棺」というタイトルで、白雪姫に見立てた少女が雪の中で横たわるという絵を描こうと思っていたのですが、情景をメインとした連作としては人物の比重が高すぎると感じたのでやめました。
雪原のロケーションで前作に比べて情報量が下がるので見劣りしてしまわないか心配でしたが、彩度の強い色をポイントで使う事で白も活かせたのではないかと思います。連作ではその一枚だけでなく全体でバランスをとる必要があると言う事も実際にやってみて実感致しました。
四枚並べてみるとこんな感じです。
初めから意識して描いたわけではないのですが、季節が進むのと逆に時間帯は夜から昼へと移行し、変化のある形になったのではないでしょうか。
割と先を考えずに行き当たりばったりで描いてきた感がありますが、結果として何とかまとめられたように思います。描きながら色々考える事ができて学ぶものも多い制作でした。
途中から制作過程も公開していましたが、多くの方に応援していただいて感謝しています。ここまで情景を重視しての作品を描いてきたので、次はキャラクターを重視して描いてみたいですね。
長くなりましたがお付き合いどうもありがとうございました。